書評
福者ホセマリアは、1902年、スペインのバルバストロに生まれる。1925年にカトリック司祭となり、1928年には神の霊感を受けて、オプス・デイを創立した。その生涯、ならびにオプス・デイの歴史は多難を極めたが、神の業に邁進する師は、その手を緩めることはなかった。
普遍的とも言える視点から、どの人も神の子であり、キリスト信者であるなしを問わず、全力を尽くして愛すべき存在であると考えていた。
なかでも、日本は師にとって特別な存在だった。司祭になった若い頃から日本へ宣教に行こうと考えていた。オプス・デイの創立のため、この夢は実現することはないと理解していたものの、いつの日か出入りする若者の中から、師の熱い望みを叶えてくれる者が出ると予想していた。大きな困難に直面していた草創期はもちろん、オプス・デイが日本の地に始まることを師は片時も疑わず、日本のために祈り続けた。どうして、これほどの思いを日本に対して師は抱いたのか。その答えが、この著書から得られるだろう。
師の切実な思いは、書き残された文章の端々や小さなエピソードからうかがい知れる。とはいえ、日本の人々の心に十分に届いているとは言えなのではないだろうか。
「日本では、ホセマリア・エスクリバー神父は殆ど知られていないのが実状だ」と著者は述べている。エスクリバー神父は、生前「隠れて過ごす」ことがモットーだった。しかし、「ともし火をともして、それを器で覆い隠したり、寝台の下に置いたりする人はいない。入って来る人に光が見えるように、燭台の上に置く。今や人々を照らす明かりをベッドの下に置いておく訳にはいかない」と聖ルカの福音書にある。本書を通して、創立者の信仰と愛が日本の人々の心を照らし出すことになるだろう。